国民民主党:政局の脆弱性
最終更新:2025年10月25日
2025年10月21日、自民・維新連立政権のもとで高市内閣が発足した。ここ1週間の政局の中心は、国民民主や維新の会の高市総裁との関わり方であった(ということにされていた)。国民民主は紆余曲折の末(?)結局連立に加わらず、ネット上では「玉木はブレブレ」だの散々な言われようであった。
以上は、高市内閣 に加わることが何より重要だと主張する人たちの視点である。しかし、国民民主を1年ウォッチしてきた私からすると、全く別の党の問題点が見えてくる。むしろ玉木代表はブレブレなのではなく、逆に「各党等距離」と言う価値観に拘泥して、融通が効かなくなってしまっているのではないか、と考えるのである。
「各党等距離」戦略の限界
玉木代表から他党との連携に関してよく飛び出す言葉が、「政策本位」「各党等距離」である。このようなスタンスが政策実現にとって最善であると国民民主が考えている、と理解している。確かに特定の政党に肩入れすると、党が独自に主張している政策が歪められる、と言うことはあるのだろう。
しかし、このスタンスは、政策実現のための根回しをより困難にしてしまう恐れがある。実際今回の首班指名に関しても、野田代表から連携を持ちかけられたことにより、立憲民主党との協議に時間を取られてしまった。たとえ安全保障・エネルギーといった国家の基本に関する政策が一致していない政党であったとしても、「各党等距離」という建前のもとでは、協議せざるを得ない。
当たり前のことではあるが、基本政策が近いほど、協議の優先順位は高い。今回の政局でより時間をかけて協議すべきだったのは、基本政策が近い自民党であり、維新の会であったはずだ。連立が絶対ではないにせよ、年収の壁引き上げなどに意欲を見せている高市総裁・吉村代表との首班指名後の政策協議の枠組みに、さらに具体性を持たせることができたはずだ。
自民党との連携に関して玉木代表は、「連立よりも(政策実現による)信頼関係の醸成が先」とよく述べている。過去の国民民主党が自民党と交わした合意事項が十分に履行されていない事実を考えれば、それは一理ある。しかし現在の国民民主党の党勢では、どこかと合意しない限り自らの施策は実現できないことを踏まえると、全面的に信頼できないとしても自民党との連携にもう少し踏み込むべきであったと言わざるを得ない。
連合や芳野会長との関係について
国民民主党の連立入りの是非について、連合の芳野会長は「容認できないスタンスに変わりはない」と述べている。この発言も、国民民主党が連立入りを断念した一因である可能性も否定はできない。この連合との関係性は、党政局の重大な脆弱性であることは間違いない。少なくとも、支持母体が連立の是非や連携のあり方に干渉してくる今のあり方は、健全とは言えないということは、玉木代表が一番認識していることであろう。
結党以来党を支えてきた支持母体なのだから、党が自ら関係を切るべきとは考えないが、その立ち位置については、党内で真剣に整理されるべき時期が来ていると考える。
ここで重要なのは、連合も一枚岩とは言えない点である。そもそも連合は、1987年に日本労働組合総評議会(総評)と全日本労働総同盟(同盟)とが中心に統合した組織であり、
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旧総評系(旧社会党→立憲民主党など支持):自治労、日教組など。戦後の革新系労働運動の流れを汲む。
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旧同盟系(旧民社党→国民民主党など支持):自動車総連、電力総連、電機連合、UAゼンセン(4産別)など。戦後の中道・保守系労働運動を牽引。
が大雑把な分類であり、異なる思想基盤を持つとされる。4産別も自民党との連携や連立に関しては必ずしも全肯定しているわけではないが、今後は連合全体よりも4産別単独との関係性を重視することが妥当になる(無論、支持母体に干渉されず行動できることが理想ではあるが)。また、世論では旧総評系と旧同盟系をひとまとめに「労働組合」と批判されることが多いが、その中での旧同盟系の立ち位置を明確にする発信も必要になる。
「高市会談の内容」「協議の枠組み」が鍵
今回の政局で「国民民主党は終わった」などと散々に言われているが、まだそうとは言い切れ ない。ここまで玉木代表と高市総裁とで会談が行われてきたが、連立の有無以外にも、今後の政策実現のための協議の枠組みも議論されたと考えられる。また、玉木代表は10月21日の記者会見で、年収の壁などについて、「(自維公国)4者の政策責任者会合を速やかにやるべきだ。早急に調整していきたい」とした。今後の国民民主党の動向は、こうした枠組みを通して、責任ある立場で政策実現を主導できるかにかかっている。
「紆余曲折の末結局連立に加わらず」?
筆者は国民民主党が連立に加わらないことは、(政策実現のための最善手かは別として)既定路線であったと考えている。10月9日の時点で臨時国会の冒頭での(自民・公明の)連立政権に加わることについて否定的な考えを示したことが全てであろう。
のちに公明党が連 立離脱を表明して、国民民主党の連立入りの有無がクローズアップされた。しかし公明党が離脱したところで、高市総裁以外(例えば立憲野田代表や玉木代表自身)が首班指名選挙で首相に選ばれる可能性は極めて低かったので、判断の変更がなかった、と考えるのが自然であろう。
筆者には、「(一部の)高市支持者が自分の思い通りに動かない玉木代表の批判材料として、見せかけのブレブレの面を強調した」ように思えてならない。
(注:10/24 たまきチャンネルでの「もともと連立は考えていなかった」という趣旨の発言を確認。)
公明党との連携はありえない?
10月16日の会見で玉木代表は「(公明党と)政策面を含めて連携を強化」すると述べた。これによって一部の高市支持者は「公明党と連携する玉木は終わり」などと批判したが、的外れであろう。
公明党との連携はあくまで「自公国でかわした年収の壁・ガソリンの暫定税率に関する3党合意」「企業団体献金の規制」などこれまで公明党と継続された政策協議を念頭に置いたものに過ぎない。全面的な公国の共闘を意味するものではない と考えるのが妥当だ。
もはや「玉木私党」ではない。役割分担の必要性
今回の件は、玉木氏の政局上の弱点を露呈させたのは間違いなく、より一層批判を大きくしたのは、維新の会に対する「二枚舌」発言である。たまきチャンネル7周年企画 での榛葉賀津也幹事長との会談でも、榛葉氏から「玉木は政策、榛葉は政局」との話があったが、的を射ていると言わざるを得ない。玉木代表が政策に強いのはおそらく事実だが、政局に絡んだ発信のあり方は、党全体の戦略として整理されなければならない。また、足立康史議員、山田吉彦議員など、党所属の国会議員が増えた中で、玉木代表個人の力量だけに依存しない「分権的リーダーシップ」の確立こそ、党の挽回の鍵となるだろう。
たまきチャンネルでの政局発信
玉木代表が、最近の政局に関して発信していたので、参考までに以下に列挙する。盲信は禁物だが、概ね代表の本音ベースでの発信であると解している。