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東京大学の増収試算

最終更新:2025年3月1日

東京大学の授業料改定の背景は、教育活動を継続していくための財源の確保であり、東京大学にとってどのくらいの財源の確保になるかについて考えることは非常に学生側にも大学運営にも重要である。神奈川県総合法律事務所の文献 が参考になるが、これは「地方出身者に限り、授業料の 1/4 が免除」が大学から出される前の試算であった。令和 7 年(2025 年)1 月 17 日発表の授業料減免の拡充 を考慮するとどのようになるだろうか。

具体的な計算

Warning

あくまで概算であり、誤差があることに注意されたい。

表 1】に、家計支持者の年収割合と授業料の取り扱いを示した。先述の文献 によると、東京大学の学部学生 14,058 人から外国人学生 474 人と休学者 415 人を除くと 13,169 人であるから、

  1. 現在も全額免除(9.1%):±0 円

  2. 新たに全額免除(7.3%):13,169 人 ×7.3%×(-535,800)円=-5.2 億円

  3. 値上げ額の 75%(7.0%):値上げ額の 75%は、642960 円 ×75%=482,220 円である。13,169 人 ×7.0%×(482,220-535800)円=-0.49 億円

  4. 20%値上げ(76.6%):13,169 人 ×76.6%×(642960-535800)円=+10.7 億円

合計の増収は、-5.2-0.49+10.7=+5.0 億円と概算できる。

評価

  • 東京大学の財務情報 によると、令和 4 年度の経常損失として 51 億円を計上している。こういうことを受けての授業料改定という側面もあるのだろうが、この試算によると、増収はそのうちの約 10%に過ぎない。果たして安定した財源を確保するという点において、授業料改定は有効なのだろうか。

  • 首都圏一極集中を避け、地方学生をより受け入れるという点で、600〜900 万円の家計支持者に対して事実上の授業料値下げとなることは評価できる。ただし、果たして「1 都 3 県」という基準が適切なのかは微妙である(例えば、千葉県の館山よりも、茨城県の取手や守谷の方が、大学へのアクセスは良い。果たして取手や守谷は「地方」だろうか)。

  • そもそもこのように授業料に段階を設けることにより、事実上の「世帯収入の壁」状態になり複雑さが増してしまっている(899万円で値下げで、900万円で値上げか)。やはり、授業料の改定は得策とは言えないのではないかと思える。

【表 1】家計支持者の年収割合と授業料の取り扱い

年収人数割合参考%取り扱い割合
50万円未満60.5%0.46%現在も全額免除9.1%
50~100万円70.5%0.53%
100~200万円241.8%0.91%
200~300万円382.9%1.45%
300~400万円675.1%1.70%
400~450万円新たに全額免除7.3%
450~600万円14711.2%1.86%
600~750万円値上げ額の75%(1都3県を除く) 7.0%
750~900万円17313.2%3.29%
900~950万円20%増額76.6%
950~1050万円13410.2%5.10%
1050〜1250万円15912.1%3.03%
1250〜1550万円947.2%1.19%
1550万円以上15011.4%-
分からない31524.0%-
  • 東京大学の授業料値上げと授業料免除拡大をどうみるか(神奈川県総合法律事務所、こちらの出典)を改変

  • 「参考%」は、50 万円あたりの割合に換算したもの。年収の区切りが半端であるが、質問紙の選択肢のとおりである

  • 「300 ~ 400 万円」と「400 ~ 450 万円」は回答の選択肢が「300 ~ 450 万円」となるため、その回答者を 1:2 に分割した。「450 ~ 600 万円」と「600 ~ 750 万円」も同様に「450 ~ 750 万円」の回答者を 1:1 に分割し、「750 〜 900 万円」と「900 〜 950 万円」も同様に「750 〜 950 万円」の回答者を 3:1 に分割した

  • 東京大学 2021 年度(第 71 回)学生生活実態調査・単純集計表 16 頁(出典

  • 1 都 3 県は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県。出典 より、この 4 自治体出身の通学者の割合を年収にかかわらず 55%と仮定。