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五月祭展示:シミュレーション科学の世界へようこそ

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以下の文章は地球惑星物理・環境学科の五月祭2024(5/18,19)で実際に展示した文章です。なお、そこまで読んでくださった方は多くなかった模様。

皆さんも、1週間後の天気がなぜ予測できるのか、一度は気になったことがあると思います。また、最近気候変動の予測に関するニュースをよく見かけます。そのような将来の複雑な現象がなぜ予測できるのでしょうか。

これを実現する強力なツールがスーパーコンピュータ(スパコン)などを用いたシミュレーションです。スパコンの計算速度が飛躍的に向上している現在、実際の現象を観測・実験することと並んで、コンピュータ上で再現することが現代科学で重要な研究手法となっています。

例えば天気予報の場合、時間が経つとどのように空気や海水が流れるか、あるいは熱がどのように移動するか、ということは物理法則(方程式)が決めています。 つまり、空気の流れの速さや温度が今どうなっているか、地形データなど(初期条件・境界条件) を把握することができれば、将来どうなるかということも、その物理法則に従って再現することができるわけです。

  • 高校物理で出てくる物理法則の例:重力に従う物体の運動方程式

    ma=mg m \boldsymbol{a} = m \boldsymbol{g}

    物体の落下などの挙動は、この式と初期条件(初速や位置など)によって予測できる。

  • 地球惑星物理で出てくる物理法則の例:ナヴィエ・ストークス方程式

    ut+(u)u=1ρp+ν2u \frac{\partial \boldsymbol{u}}{\partial t} + (\boldsymbol{u} \cdot \nabla) \boldsymbol{u} = - \frac{1}{\rho} \nabla p + \nu \nabla^2 \boldsymbol{u}

    気体や液体などの流体の速度と、圧力や粘性との関係を表したもの。少し難しいので、こんなものがあるんだ〜、と思っていただきたい。

シミュレーションは天気予報のような未来予測だけでなく、昔の気候変動がどうだったか、などの過去に関する研究にも使われています。それだけでなく、2024年5月現在ニュースなどで問題にもなっている太陽フレアなど、多様な地球惑星物理現象の理解に応用されています。

ただ、シミュレーションは万能ツールではありません。詳しい説明は省きますが、あくまでシミュレーションで使う物理モデルは実際の物理法則の近似に過ぎないので、その物理モデルが現実の現象を反映しているか、きちんと議論しなければなりません。また物理現象は、初期・境界条件を少し変えただけでも、その後起こることが大きく変わってしまう場合があります(「バタフライ・エフェクト」で調べてみよう)。つまり、計算精度やシミュレーションで用いた物理モデルがいくら正しくても、初期条件が違うならば正しい結果は出ません。よって実際の研究では、観測での現在のデータの取得と、シミュレーションの物理モデルとの、両方の精度が重視されています。

今回の展示では、一般的なパソコンの計算処理速度でも実行可能なシミュレーションをいくつか実演します。楽しくて奥深いシミュレーション科学の景色をどうぞお楽しみください。